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VOICE Vol.26

正しい知識で「睡眠時無呼吸症候群」と向き合う

睡眠時無呼吸症候群は睡眠中に呼吸が止まることを繰り返し、日中に眠気やだるさを感じる病気で、
胃酸が食道に逆流する胃食道逆流症(GERD[ガード])の合併率が高いことがわかっています。
今回は、睡眠時無呼吸症候群のエキスパートである九州大学病院 睡眠時無呼吸センター長・特任教授の安藤眞一先生に、
睡眠時無呼吸症候群の原因や治療、GERDとの関連についてお話を伺いました。

睡眠時無呼吸症候群とはどのような病気ですか?image

寝ている間に呼吸が停止してしまう病気で、10秒以上の呼吸停止が1時間に何回あるかで重症度が決まります※。のどの奥が何らかの原因でふさがってしまう閉塞型と、脳から呼吸の指令が出なくなる中枢型に分けられますが、ほとんどの患者さんは大きないびきを特徴とする閉塞型睡眠時無呼吸症候群です。
患者さんの約半数は、いびきや無呼吸を家族やパートナーの方に指摘されたことを理由に病院を受診しており、こうしたケースでは患者さん自身は眠気などの症状をあまり感じていないことがあります。患者さんが症状を自覚している場合、訴える症状として最も多いのは眠気ですが、そのほかに、だるさや起床時の頭痛、夜間の目覚めが多くなることなどで生じる夜間頻尿などの訴えがあります。一方、眠気などの症状が運転中の事故や仕事の能率低下を引き起こすだけでなく、睡眠時無呼吸症候群があることで高血圧や糖尿病にかかりやすくなったり、心臓病や脳血管障害、腎臓病にも悪影響を与えたりすることがわかっています。

※5回/時未満:正常、5~15回/時:軽症、15~30回/時:中等症、30回/時以上:重症

どのようなことが原因で起こると考えられているのですか?image

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の原因の一つは骨格の問題で、下あごが小さく舌がおさまりきらない方、軟口蓋(なんこうがい)といって口の天井の部分が奥に向かって相対的に長い方はのどがふさがりやすくなります。また、肥満の場合には、舌やのどのまわりの組織にも脂肪がついてしまうのでのどが閉塞しやすくなります。そのほか、昼の間に足にたまっていた水分が、寝る時に体を横にすることでのどの方に戻ってきて、気道の周囲がむくんでしまうことや、加齢によってのどの筋肉やその他の組織がゆるんでしまうことなども、その一因と考えられています。

睡眠時無呼吸症候群の眠気はどのようなものなのでしょうか?image

眠気の程度は、患者さんごとに全く異なります。お昼ごはんの後にリラックスすると少し眠くなるというような、私たちが普段感じるものと変わらない程度から、例えばカラオケを歌いながらでも寝てしまうという強い眠気を訴えるケースもあります。ほとんど眠気を感じないとおっしゃる方もいますが、こういった場合、眠気が常態化して感じにくくなっていることがあり、治療後に振り返って点数をつけてもらうと、非常に重度の眠気をもっていたことがわかることもあります。眠気は非常に危険な事故につながることがありますから、心配と感じる方は、病院で診察を受けて眠気を客観的にみてもらうということが大事だと思います。

診断と治療について教えてください。image

診断の第一段階は、自覚症状の訴えもしくは医師による問診と口の中などの観察で、睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、次のステップとしてご自宅での簡易検査を行います。無呼吸の回数や血中の酸素濃度を調べる装置を一晩つけて過ごしてもらいますが、ここで睡眠時無呼吸症候群が強く疑われる結果が出た場合には、1泊2日の入院検査を実施します。寝ている間の脳波や目の動き、いびきや呼吸の状態などを詳しく観察し、診断を行うとともに治療方法の検討も行います。
治療は、肥満の方では減量が基本です。多くの方では抱き枕などを使って横向きに寝ていただくのも効果的ですし、アルコールや、炎症によってのどを狭めてしまうタバコは控えていただくようにしています。下あごを前に出して固定するためのマウスピースや、CPAP(シーパップ)といって寝ている間にマスクを装着し圧力をかけて喉を開く装置も広く治療に使用しています。

なぜ、GERDが合併しやすいのでしょうか?image

睡眠時無呼吸症候群の40~50%にGERDが合併していると言われていますが、その理由の一つは、肥満が睡眠時無呼吸症候群とGERD、両方の原因であるということがあります。また、覚醒時は、食道と胃の境目にあって胃酸の逆流を防いでいる下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)がゆるむことがわかっており、睡眠時無呼吸症候群によって夜間覚醒することが多くなるために逆流が起こりやすくなると考えられています。GERDを合併している患者さんに対しては、主にプロトンポンプ阻害薬という胃酸の分泌を抑えるお薬を使ってGERDの治療を行います。

睡眠時無呼吸症候群を心配される読者の皆さんへアドバイスをお願いします。image

睡眠時無呼吸症候群の診断や治療は、昔に比べると、多くの医療機関で簡便に行えるようになってきています。いびきや呼吸の停止を指摘されたり、日中の眠気やだるさなどを感じたりした場合には、かかりつけの先生にぜひ一度ご相談ください。まずは「一言話す」というところから入っていただければと思います。また、胸やけや呑酸[どんさん](酸っぱいものが口の中に上がってくる状態)などGERDを疑う症状をお持ちの場合には、受診時に伝えていただいて、一緒に治療していくということが大切だと思います。

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総監修 安藤 眞一(あんどう しんいち)先生
九州大学病院 睡眠時無呼吸センター長・特任教授、
日本内科学会認定医、
日本循環器学会社員(評議員)・専門医、
日本睡眠学会評議員・認定医、
日本高血圧学会指導医、
日本循環制御学医会理事
1986年九州大学医学部卒業。
1990年松山赤十字病院循環器科、1992年九州大学医学部附属病院循環器内科。
1994年九州大学大学院医学系学府において医学博士取得、同年カナダToronto大学留学。
1998年福岡県済生会二日市病院循環器科部長、2006年同病院副院長。
2011年より九州大学病院 睡眠時無呼吸センター長・特任教授。
2012年からは福岡済生会二日市病院顧問、2015年より筑紫医師会副会長を務める。
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